ニッチを磨き、価値転換を目指す "感性"を刺激する発想
木部用塗料分野は、ユーザーの海外生産シフト、乾式建材の台頭、消費者ニーズなどの構造変化にさらされ続けている。そのためメーカー各社が付加価値性に特化し、市場を細分化させていく方向性は塗料動向の近未来像を示しているともいえる。既存の枠組みから脱し、自己の力で市場を創れるのか、発想の転換が求められている。
木部用塗料分野は、ユーザーの海外生産シフト、乾式建材の台頭、消費者ニーズなどの構造変化にさらされ続けている。そのためメーカー各社が付加価値性に特化し、市場を細分化させていく方向性は塗料動向の近未来像を示しているともいえる。既存の枠組みから脱し、自己の力で市場を創れるのか、発想の転換が求められている。
日塗工の実態調査によると、家具、建材を含む木工製品向け塗料出荷量は、約2万トン(平成26年度)。平成19年度には4万3,000トンを記録したが、リーマンショックを契機に需要が激減。ここ数年は、2万トン前後を推移している状況にある。
かつて旺盛を極めた家具市場においては、婚礼家具を不要とするライフスタイルの変化から既に減少傾向を余儀なくされていたが、リーマンショックを契機に建材メーカーが海外シフトを本格化。木工塗装分野の内需縮小を一層顕著なものにしている。
加えて、更に追い討ちをかける形で、オレフィンシートにEBコーティングを施したフローリング材などの乾式建材が台頭。本物の木目と見間違うほどに印刷技術が高度化しており、品質と施工性の良さから市場を席巻、塗装の領域を侵食している。
ただこうした変遷をたどる中で、木工塗装品は高級品としての立ち位置を色濃くしている。そこには、"本物の木(素材)を使いたい"という消費者ニーズが根強く存在するため。木を現(あらわ)しで使う突板、無垢材と塗装は切っても切れない関係にあることからフィルムなどの異種技術の台頭が、素材本来の質感を生かしつつ、色を加え、機能を付与する塗料・塗装の付加価値性を浮かび上がらせている。
それでも業界においては、木材需要の増加が塗料需要を牽引するとの期待がある。
平成22年に施行された「木材利用促進法」に加え、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの主会場となる新国立競技場に木材を多くあしらったデザインが採用されたことは、木材需要を加速化させるとして関心を集めている。
ただ、木材需要の増加が塗料需要の増加と必ずしも一致しない。
今回、国が掲げる木材普及拡大策は、林業再生も含め、生態系の維持や災害防止の観点から国産材利用を推し進め、木材自給率を50%にまで引き上げることを目的としている。その需要先として真っ先に挙がるのが建築分野だが、強度、耐火性を高めることで構造部材での利用拡大を見据えており、塗装を要する現しを多用するかは未知数なところ。また樹脂と木材チップを混合したWPC材の需要が増加することも見込まれ、木材の資材的拡大策では、塗料需要と直結しない側面がある。そのため、業界自らが素材への依存から脱した形で塗装品の新たな価値を訴求する必要が出ている。
木工製品向けのパイが絞られる中、塗料メーカーにとっては、現場で施工する汎用分野への展開が残された成長領域との見方を強くしている。
ターゲットに見据えるのは、塗り替え需要の拡大。リフォーム、リノベーションの高まりを追い風に屋内外木部のメンナンスの重要性を喚起することで、市場の底上げを図りたいとの思惑がある。
その代表格にあるのが、屋外用として展開する木材保護塗料。防腐・防カビ性能を付与した同塗料は、建築学会規格を取得するなど建築塗料分野の中で独自のポジションを形成し、約60億円(本紙推計)の市場に成長。「キシラデコール」を擁するトップの大阪ガスケミカルは、1ブランドで約半数のシェアを持つガリバー的存在となっており、市場をニッチに絞り込み、シェアを確保するという点では、多くの塗料メーカーが目指す方向性を体現してきたともいえる。
しかし、その汎用分野もメンテナンスに対する積極的なアプローチとともに流動化の兆しを見せている。
最たる理由はユーザーが多様化していること。木部塗装は建築物だけではなく、ウッドデッキ、ラティス、ベンチなど幅広い用途がある。金属やプラスチックなどと異なり、小面積で身近な造作物が多いこともあり木材塗装に対する参入障壁が低く、プロの塗装業者だけではなく、工事関連業者、一般生活者まで幅広いユーザーを生み出している。
また、そうしたユーザーの多様化は、メンテナンスの概念を"維持""補修"から"楽しむ""共有したい"という感性価値が求められるため、供給サイドはユーザーの嗜好に応じた商品設計やプロモーションが必要になっている。
木材保護塗料の分野でも、塗り替え需要に対しては、隠ぺい性に優れ、明るい色に復元できる造膜タイプの人気が高まっており、浸透タイプ一辺倒だった市場に変化が生まれている。また新たなトピックスとして、アンティーク塗装やエージング塗装が施せるデザインを訴求する仕上げ方法の開発が水面下で行われており、塗装の表現性を追求した新たな製品展開が予想される。
木部用塗料分野は、家具や建材などの木工品が量産品の減少から高級品への領域へシフトを明確にする一方で、ユーザーの裾野を広げることで需要領域を広げる両面作戦が顕在化。最終ユーザーである生活者のトレンドを捉える発想が求められている。
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